2018年2月16日

法定相続情報証明制度の留意点

 平成29年5月に法定相続情報証明制度が施行され、はや半年が経過しました。
 今回は、改めて本制度の概要を確認するとともに、その証明書を確認する際の注意点をまとめてみたいと思います。
 本制度は、相続登記をはじめとする各種相続手続きの際に、戸籍関係書類等の一式を提出することに代えて、「法定相続情報一覧図の写し」という登記所(登記官)から(認証され)交付を受けた証明書(以下、単に「証明書」といいます。)を提出することができるものとすることで、各種相続手続きにおける関係機関の戸籍関係書類等の一式の審査にかかる負担を軽減することを目的として創設されたものになります。
 証明書の交付を受ける際には、従前どおり、一旦、相続人・被相続人の戸籍謄本等の一式を自ら収集したうえ、それらを自ら作成した法定相続情報一覧図とともに、登記所に提出する必要があるものの、証明書は、利用目的の範囲内であれば、何通でも無料で交付を受けることができるため、その後の相続登記や金融機関などにおける預金の解約、名義変更または保険金請求などで、その都度、(本証明書を提出することで)戸籍謄本の束を提出する必要がなくなるという、いわば相続人側にとってもメリットもあるものになります。
 さて、この法定相続情報証明制度ですが、第三者から受け取った証明書を確認する際には、以下の点に注意が必要となります。

①証明書には、相続放棄に関する情報は記載されていない。
 上記のとおり、証明書は、戸籍関係書類等の一式を提出し、これに代わるものとして交付を受けるものになりますので、家庭裁判所に相続放棄の申立てをした相続人がいる場合であっても、(その旨が戸籍謄本に記載されるわけではないため)相続人の相続放棄の有無に関する情報までは判明しないこととなります。

②証明書には、数次相続に関する情報は記載されていない。
 法定相続情報には、被相続人の相続開始時における同順位の相続人の氏名、生年月日及び被相続人の続柄が記載されることとなっております(不動産登記規則第247条第1項第2号)ので、当該相続人が被相続人の死亡後に死亡している場合の死亡年月日が記載されず、よって、証明書からは数次相続が発生している事実を確認することはできません。

③証明書には、被相続人の死亡以前に死亡した相続人の情報が全て記載されているとは限らない。
 証明書は、上記のとおり、被相続人の相続開始時における同順位の相続人が誰であるかを端的に証明するものになりますので、被相続人の死亡以前に死亡した相続人がいる場合であっても、その相続人が子(被相続人からすれば「孫」)がおり、その者が代襲相続人となる場合を除いては、被相続人の死亡以前に死亡した相続人の情報は記載されないこととなります。
 上記のうち、とりわけ①、②については、つまるところ、証明書に記載された相続人が被相続人の遺産分割の当事者になるとは限らないという点において注意が必要となります。
 また、上記②、③のように、本来であれば戸籍謄本から読み取れるはずの情報の全てが証明書に記載されるわけではないため、考え方によっては、相続関係を証明する書面として(従来の相続関係説明図に比べ)不親切だという見方もあるかも知れませんが、冒頭で申し上げたとおり、制度自体、官民の関係機関及び相続人の双方にメリットのある大変に便利な制度となりますので、広く利用され、また、証明書の申出人の代理人として司法書士がその一助となれれば幸いと考えております。

         

                                執筆者 司法書士 羽野祐介



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