2018年11月9日

特例有限会社の特別決議はハードルが高い!?

~鳥取地判平成29年9月15日金融法務事情2080号83頁~

本判例は、特例有限会社の株主総会の特別決議要件についての解釈を示したものとして、実務の参考になると思われますので紹介します。

 本判決のポイントは、特例有限会社の特別決議の頭数要件及び決議要件(以下「特別決議要件」という)における「総株主」には、議決権を行使できない株主も含まれるというものです。
 これは、事業承継のケースにおいて、経営権を代表者に集中させるための完全無議決権スキームは、特例有限会社では使えないということになりますので注意が必要です。
本判決は、ある意味、条文をそのまま解釈したものであって、それについては妥当であると評価してよいかと思われます。ただし、そうなると、特例有限会社については、通常の株式会社と異なり、特別決議要件の算定にあたっては、当該議案について議決権を行使できない株主も含まれることから、4分の1を超える株式数を有している当該株主が、当該議案に反対している場合、「4分の3以上」の決議要件を欠くことになり、また、仮に当該株主の保有株式総数が4分の1以下の場合であっても、当該株主が過半数存在し、当該議案に反対している場合は、「半数以上」の頭数要件を欠き、いずれも株式特別決議が成立する余地はないということも留意すべきでしょう。

 会社法施行により有限会社制度は廃止になりましたが、会社法施行前に成立した有限会社は株式会社の特例として存続するとされています。特例有限会社は、基本的には株式会社に関する規律にしたがうことになりますが、その特則を「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(以下「整備法」という)で規定しています。
本判決は、特例有限会社の特別決議の規定に関する整備法14条3項(注1)を、条文の文言どおり解釈し、「議決権を行使することができる株主」に限られていないことを理由としてあげています。つまり、会社法309条2項(注2)及び(旧)有限会社法48条(注3)では「議決権を行使することができる株主」と明記されているところ、整備法14条3項ではあえてその旨が除外されているということです。なお、特例有限会社に通常の株式会社と異なる規制を設けることについては、あくまで立法政策であり、それを否定するところではないという解釈も示されています。
 本件事案は、いわゆる相続人等への売渡し請求(以下「売渡し請求」という)についての定款の定めに基づく特別決議に関するものです(会社法174条・175条・309条2項3号)。具体的には、議決権を行使できない売渡し請求を受ける相続人である株主も特別決議要件の算定に含まれるかが争点だったわけですが、当該株主も特別決議要件の算定に含まれるとの判断を示しました。

さいごに、本件と同様に、売渡し請求についての定款の定めは、通常の株式会社だけでなく特例有限会社でも採用されているケースが多いので、本判決を踏まえ、株式会社に移行する等何らかの対策を講じておくことが必要なケースもあるかもしれません。

                                執筆者 司法書士 古屋奈穂美




(注1)整備法14条3項
特例有限会社の株主総会の決議については、会社法第309条第2項中「当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2」とあるのは、「総株主の半数以上(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)であって、当該株主の議決権の4分の3」とする。
(注2)会社法309条2項
前項の規定にかかわらず、次に掲げる株主総会の決議は、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。~以下、略~
(注3)(旧)有限会社法48条 
前条ノ決議ハ総社員ノ半数以上ニシテ総社員ノ議決権ノ4分ノ3以上ヲ有スル者ノ同意ヲ以テ之ヲ為ス
2 前項ノ規定ノ適用ニ付テハ議決権ヲ行使スルコトヲ得ザル社員ハ之ヲ総社員ノ数ニ、其ノ行使スルコトヲ得ザル議決権ハ之ヲ議決権ノ数ニ算入セズ

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