2019年8月27日

保証契約に関する民法改正

 2017年5月、民法の一部を改正する法律案が可決され、2020年4月1日から改正民法が施行されます。
 その中から、保証に関して追加された3つの新しい規定のうち、「極度額の定めのない個人の根保証契約」についてご紹介いたします。
 「保証契約」とは、借金の返済や賃料の支払などの債務を負う「主債務者」が、その債務の支払をしない場合に主債務者に代わって支払をする義務を負う契約をいいます。保証契約のうち、「根保証契約」とは、一定の範囲に属する不特定の債務について保証する契約をいい、例えば、①「個人事業主が事業資金を銀行から継続的に借り入れる際に、その銀行取引を第三者が保証する」ケースや、②「子どもがアパートを借りる際に、その賃料等を大家との間で親が保証する」ケース、③「会社の社長が、会社の取引先との間で、その会社が取引先に対して負担する全ての債務を保証する」ケースなどがあります。これらのケースでは保証人となる時点では、現実にどれだけの債務が発生するのかはっきりせず、保証人がどれだけの金額の債務を保証するのか分かりません。
 保証人になると、債権者から主債務者の代わりにその債務の支払を求められることになり、保証人が任意に支払わない場合、保証人の自宅不動産が差押え等されて立退きを求められたり、給与や預貯金の差押えを受けたりするなど、裁判所の関与の下で支払を強制されることもあります。さらに、根保証契約を締結して保証人となる際には、上述のとおり、主債務の金額が分からないため、将来、保証人が想定外の債務を負うことになりかねません。
 上記①のケースは、主債務に貸金等債務が含まれる根保証契約として、すでに2005年4月から厳しいルールが設けられていましたが、今回、②および③のような貸金等債務以外の根保証のケースについてもこのルールが拡大されることとなりました。
 今回の民法改正では、②のケースに関して「Ⅰ.極度額の定めのない個人の根保証契約は無効」、「Ⅱ.特別の事情による保証の終了」というルールが追加されました。
 「Ⅰ.極度額の定めのない個人の根保証契約は無効」とは、個人(会社などの法人は含まれない)が保証人となる根保証契約については、保証人が支払の責任を負う金額の上限となる「極度額」を定めなければ、保証契約は「無効」となる、というものです。
 「Ⅱ.特別の事情による保証の終了」とは、個人が保証人となる根保証契約については、保証人が破産したときや主債務者又は保証人が亡くなったときなどは、その後に発生する主債務は保証の対象外となるというものです。
 2005年4月の民法改正により制定された、「元本確定期日」の定めについては、今回の改正では追加されていません。これを②や③のケースのような貸金等債務以外の根保証について拡大すると、例えば賃貸借については、最長でも5年で保証人が存在しなくなるといった事態が生ずるおそれがあり、大家としては保証契約を前提として賃貸借契約を締結したにもかかわらず、5年を超えて賃貸借契約が継続した場合、賃貸人は保証がないまま賃貸し続けなければならないこととなり、不都合が生じるためです。
 極度額は「○○○万円」などと明確に定めなければならず、契約も書面(電磁的記録を含む)でしなければ、その効力を生じません。「極度額は賃料の3か月分」と記載されているのみでは足りないとされています。今後、新規に締結する契約書だけでなく、既存契約の更新の際にも、場合によっては改正民法が適用されるケースがあるため、保証契約の締結時には注意が必要です。この極度額の設定については、国土交通省から「極度額に関する参考資料」というものが公表されていますので、設定時の参考資料としてご活用ください。(参考URL:https://www.mlit.go.jp/common/001227824.pdf)
 



                                執筆者 司法書士 城ヶ﨑理絵




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