2020年7月6日

自筆証書遺言の保管制度について

今回は、令和2年7月10日に施行される「自筆証書遺言の保管制度」について、その概要をご紹介いたします。
 遺言の方式には①自筆証書遺言(第968条)、②公正証書遺言(第969条)、②秘密証書遺言(第970条)の3種類があります。②と③の遺言の方式は、公証人や証人が関わる必要がありますが、①自筆証書遺言については、誰の関与も必要とせず遺言者自身が作成することができますので、最も簡単で費用もかからず、遺言書の作成やその内容を他者に秘密にしておくことができる反面、遺言者の死亡後、相続人に発見されなかったり、改ざんされる恐れもあることから、トラブルの原因にもなっていました。
 そこで、手軽に作成できるという自筆証書遺言のメリットを保ちつつ、遺言者死亡後のトラブルを解消する方法として、法務局が自筆証書遺言を保管するという新しい制度(以下、「本制度」といいます。)が創設されました。自筆証書遺言は、相続開始後、相続人等により家庭裁判所に検認を請求する必要がありますが、本制度で保管された遺言書はこの検認が不要となります。
 全国の法務局のうち、①遺言者の住所地、②遺言者の本籍地、③遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する法務局のいずれかが遺言書を保管する法務局(以下、「遺言書保管所」といいます。)となります。
 自筆証書遺言の保管申請は、本制度所定の様式に従って自筆証書遺言を作成後、申請書を作成(申請書の様式は法務省HPからダウンロード、もしくは法務局窓口に備え付けの申請書を使用)し、必要書類(遺言書、申請書、手数料3,900円、本人確認書類等)とともに遺言書保管所に提出して行います。手続終了後、保管証が発行され、保管は完了となります。本制度所定の様式であれば、保管制度の開始前に作成された遺言書でも保管申請が可能です。
 遺言書の原本は、遺言者死亡の日から50年間保管され、遺言書のデータは遺言者死亡の日から150年間保管されます。
 遺言者の生前は、遺言者本人の請求により遺言書の閲覧や撤回(別途手数料が必要)をすることができますが、相続人等が遺言書を閲覧できるのは、遺言者の死亡後に限られます。相続人等が遺言書の閲覧をすると、法務局の職員(以下、「遺言書保管官」といいます。)より、その方以外の相続人等に対しても遺言書を保管している旨が通知されます。
 本制度は本年7月10日より全国の法務局で利用できます。既に7月1日から予約の受付が開始されていますが、本制度における遺言書の保管申請や閲覧請求等、法務局で行う全ての手続きについては、予約(専用HP、もしくは電話予約)が必要となっていますので、ご注意ください。
 公正証書遺言を作成する場合と違い、遺言書保管官は、保管の際に外形的な確認(日付及び氏名の自書、押印の有無等)のみ行い、遺言の内容についての助言やその有効性について確認することはできませんので、遺言書の内容について不安がある方は、別途専門家にご相談ください。また、公正証書遺言を作成する際に、遺言者が病気等で公証役場に出向けない場合、公証人が自宅や病院に出張して公正証書遺言を作成することができますが、本制度は遺言者本人が法務局で手続きを行う必要があるため、遺言者本人が法務局へ出頭できない場合は、本制度を利用することはできません。
 以下のコラムもご参考ください。
自筆証書遺言に関する民法改正



                                執筆者 司法書士 城ヶ﨑理絵

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