2020年8月25日

特別の寄与の制度の新設について

 本稿では、民法の改正により令和元年7月1日に施行された「特別の寄与の制度」について、その概要をご紹介いたします。

 被相続人に対して療養看護等の貢献をした者が相続財産の分配を受けることを認める制度として、寄与分の制度があります(民法第904条の2)。しかし、寄与分は、相続人にのみ認められている制度のため、相続人以外の者、例えば、相続人の配偶者が被相続人の療養看護に努め、被相続人の財産の維持又は増加に貢献しても、遺産分割手続において寄与分を主張することや相続財産の分配を請求することはできませんでした。一方で、相続人であれば、寄与行為がなかったとしても、相続財産の分配を受けることができ、不公平であると指摘されていました。
 そこで、寄与行為をした相続人以外の者(以下、「特別寄与者」といいます。)が、その寄与に応じた額の金銭(以下、「特別寄与料」といいます。)の支払を請求できる制度(以下、「本制度」といいます。)が創設されました(民法第1050条)。
本制度を利用して特別寄与料を請求する場合の要件は、特別寄与者が①被相続人の親族であること、②特別の寄与をしたこと、③②を無償で行ったことです。
 ①被相続人の親族
親族とは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族をいいます。相続人、相続放棄をした者、相続人の欠格事由に該当し又は排除によって相続権を失った者は、本制度を利用することができません。
 ②特別の寄与
療養看護その他の役務の提供をしたことにより、相続財産の維持又は増加に対して特別の貢献がある場合をいいます。財産上の効果を伴わない精神的な援助等は、特別の寄与にあたりません。
 ③無償
特別寄与者が、被相続人から、労務の報酬として又は生前贈与や遺贈等によって、労務の実質的な対価を受け取っていないことが必要です。被相続人以外の者から金銭等を受け取った場合は、特別寄与料の算定の中で、「一切の事情」として考慮されることになります。

 特別寄与者は、まず、相続人に対し特別寄与料の支払を請求し、協議を行います。当事者間で協議が調わないとき又は協議することができないときは、特別寄与者は、相続が開始した地を管轄する家庭裁判所に対し、協議に代わる処分を請求することになります。家庭裁判所は、特別寄与料の額(相続財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできないとされています。)を定め、相続人に対し、金銭の支払を命ずることができます。
 なお、本制度による権利行使の期間は、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知ったときから6か月(時効期間)、又は相続開始のときから1年(除斥期間)とされているため、注意が必要です。また、新しい制度のため、要件の詳細や特別寄与料の算定等、今後の審判例の集積を注視していく必要があります。上記の点にご注意いただき、ご不明な点は専門家にご相談ください。




                                執筆者 司法書士 髙島芳美





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